ヘリウムを知る
ヘリウムとは?
空気より軽い「ヘリウムガス」、風船にも使われているヘリウムが今、ロケット、半導体、原子炉、宇宙船、深海潜水など様々な分野で大変重要な役割を果たしているのをご存知ですか? このコーナーではこれまでの歴史とヘリウムの使われ方や性質をご紹介します。
業態別ヘリウムの使用用途
主な用途 ヘリウムの |
完全不活性 (化学的安定・ 不燃性) |
溶解度小 | 極低温 沸点 |
高熱 伝導率 |
密度小 | 拡散性 良好 |
無しげき性 | 粘性小 | 超音速 | 用途例 |
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加圧・パージ用 | ● | ● | ● | ロケット、ミサイルの燃料加圧、パージ | ||||||
溶接用 | ● | アルミ、特殊合金の溶接シールド用イナートガス | ||||||||
雰囲気・シールド用 | ● | ● | 半導体、集積回路、光ファイバーの製造用 チャンバー内置換・クリーニング、核燃料棒の加圧封入、窒化・酸化防止 |
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冷却用 | ● | ● | ● | 大型冷凍液化装置、希釈冷凍機 超電導量子干渉磁束計(SQUID) |
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浮揚用 | ● | ● | 飛行船、気球、風船の浮揚 | |||||||
リークテスト用 | ● | ● | ● | 原子炉、宇宙船、水道管漏洩検査 高真空機器・冷媒・空調・消火器のリークテスト |
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ガスクロ用 | ● | ● | キャリアガス、標準ガス用 | |||||||
医療用 | ● | ● | ● | ● | ● | ぜんそく、呼吸困難の治療 | ||||
潜水用 | ● | ● | ● | 深海潜水、飽和潜水 | ||||||
熱伝導用 | ● | 多目的高温ガス炉冷却/駆動・核融合関連冷却、 光ファイバー線材引抜き・ガラス基板等の奪熱 |
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極低温生成用 | ● | ● | 超伝導マグネット(リニア鉄道、超電導モーター、MHD発電、核融合、医療用MRI、産業用NMR)、超電導ケーブル、クライオポンプ、超電導MRイメージング装置 | |||||||
粉体製造用 | ● | ● | ジェットミル粉体製造装置 | |||||||
その他 | 原子炉のシールド、レーザーガス、プラズマガス、溶射(粉体(コーティング材)プラズマジェット動作)用、真空層ガラスの中間層用イナートガス(防音・断熱)、エアバッグ用ガス |
左右にスワイプすることで表が見れます。
ヘリウムの歴史
ヘリウムは1868年、英国のN.Lockyerによって太陽スペクトル中で発見されました。さらに1895年、同じ英国のW.Ramseyが地球の大気中にもヘリウムが存在することを確認しました。その後、1905年に米国のP.Cadyが天然ガスからヘリウムの分離を行い、今日のヘリウムの工業的生産の基礎を作り、1908年には、オランダのH.Kamerlingh Onnesが、それまで誰も液化できず「最後の永久気体」といわれていたヘリウムの液化に成功し、ヘリウムの新しい時代が開かれたのです。
ヘリウムの製造
ヘリウムは地球の大気中にわずか5ppmしか含まれておらず、現在は0.3%程度以上のヘリウムを含む天然ガスから分離・精製されています。日本ヘリウムは、日本最初の特殊断熱タンクコンテナによる液化ヘリウムの長距離海上輸送に成功した、日本のパイオニア的ヘリウムメーカーです。
ヘリウムの性質
ヘリウムは周期表18族に属し、同族の希ガス(ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)の中では最も軽く、完全に不活性で、他の元素と化合も反応しません。
“気体”は無色、無味、無臭、無刺激性であり、重さは空気の約1/7という軽さで、水にもほとんど溶けません。熱伝導度は空気の約6倍、比熱も約5倍です。“液体”は無色透明であり、重さは水の約1/8です。沸点は-269℃と、すべての液体の中で最も低く、あらゆる元素が固化してしまう絶対零度(-273.15℃)でも、常圧下では液体のままであることが証明されています。
こうした極低温ではヘリウムの超流動や金属の超伝導といった特異な現象が起こりますが、現在これらの現象を生かした、いろいろな物性の究明や、工業的な応用についての研究が進められつつあります。
ヘリウムには3Heと4Heの2種類の同位元素があります。天然のヘリウムは4Heがほとんどで3Heはヘリウム中に1.3ppmしか含まれていません。したがって、一般に使用されているのは4Heと考えて差支えありません。
ヘリウムの物性値
分子量 | kg/kmol | 4.003 | |
---|---|---|---|
沸 点 | (1 atm) | ℃ | -268.9(4.25K) |
臨界点 | 温度 圧力 密度 |
℃ MPa kg/m³ |
-267.96(5.19K) 0.227 69.6 |
気化熱 | (1 atm. 沸点) | kJ/kg | 20.4 |
気化比 | ガス Nm³ / 液m³ | 700 | |
比 熱 | ガス Cp(1 atm. 298K) ガス Cv(1 atm. 298K) ガス Cp / Cv 液(1 atm. 沸点) |
kJ/kg.K kJ/kg.K kJ/kg.K |
5.23 3.33 1.66 4.41 |
熱伝導率 | ガス(1 atm. 273K) 液(1 atm. 沸点) |
10-3W/m.K 10-3W/m.K |
143 27.2 |
密 度 | ガス(1 atm. 273K) ガス(1 atm. 沸点) 液(1 atm. 沸点) |
kg/m³ kg/m³ kg/m³ |
0.1785 16.9 124.9 |
ヘリウムの供給(形態)
天然ガス油田から産出されたヘリウムは、精製プラントで不純物を極限まで減らした後、断熱構造のコンテナで海上輸送され、当社の6カ所のヘリウム供給拠点に届きます。
その後、液化ヘリウムの場合はデュワーと呼ばれる容器やコンテナに充填され、お客様の元にお届けします。一方、ガス体ヘリウムの場合は用途に応じシリンダー、カードル、トレーラーに充填・輸送され、お客様の多様な要望に応じた形態で供給しています。